切り絵師俊寛展「色彩のカンパネラ 紙と刃で描く職人礼賛」イタリアの職人たちの世界

2025.03.01

企画展 
切り絵師俊寛展
「色彩のカンパネラ 紙と刃で描く職人礼賛」
イタリアの職人たちの世界
2025年3月29日(土)~6月22日(日)まで  

ギャラリートーク 

作家ご本人によるギャラリートークを開催します。展示のことや制作秘話などお話していただきます。

3月29日(土) 13:30~
5月11日(日) 13:30~
6月 8日(日) 13:30~

館長あいさつ

 この度、富士川・切り絵の森美術館は、開館15周年記念企画展として、切り絵師・俊寛展「色彩のカンパネラ 紙と刃で描く職人礼賛」を開催いたします。本展では、切り絵作家・俊寛の作品を通じて、イタリア・フィレンツェの職人たちの世界に触れ、その魅力に迫ります。

 切り絵という表現手法は、紙を刃で切り抜くことで生まれる独特の線や質感が特徴です。限られた素材と技法で、いかに細やかな世界を自由に描けるか。それこそが、俊寛が長年取り組んできた創作の核となる要素です。俊寛の作品は、一枚の黒い紙をベースに、デザインナイフで繊細な線を生み出し、裏面からアクリル絵の具で色付けした無数の紙片を貼り重ねることで、奥行きと色彩豊かな表現を生み出しています。その緻密さと精巧な技術は、まさに紙と刃が紡ぐ精緻な世界であり、作品の気品と温もりは、見る者の心を捉えて離しません。

 俊寛氏は7年間フィレンツェに滞在し、現地の職人文化に深く魅了されました。その経験と毎年現地を取材することにより、20年以上にわたり「イタリアの職人シリーズ」として、さまざまな職人たちの伝統的な工房の姿を切り絵で描き続けています。職人たちは、日々の仕事の積み重ねによって作品を生み出し、その手仕事には時間と経験が織り込まれています。俊寛の作品は、その過程を丁寧に表現し、日常の尊さや、長い年月をかけて技を磨くことの意味を私たちに問いかけます。職人たちの真剣な眼差し、使い込まれた工具の温もり、歴史ある工房の佇まい。それらがすべて、作品を通じて見る者の心に深く響きます。

 また、本展には、現代社会へのメッセージも込められています。効率化や大量生産が進む現代において、手仕事の価値は見過ごされがちです。しかし、職人たちが持つ「ものづくり」への誇りやこだわりは、決して消えることのない文化の礎です。俊寛の作品は、そうした職人文化の大切さを伝え、私たちに改めて考える機会を提供してくれます。

 さらに、本展では、イタリア文化と日本の伝統技術の融合もご覧いただけます。俊寛は、イタリアの職人文化を日本の切り絵技法で表現することで、両国の美の在り方を繊細に結びつけています。紙と刃を駆使して紡がれる世界は、鐘の音が響き渡るように、色彩が鮮やかに広がります。

 俊寛の作品は、単なる美術作品にとどまらず、文化的・社会的なメッセージも内包しています。精巧なデザインと卓越した技術が生み出す一枚の切り絵。その細部に宿る物語を、ぜひじっくりとご鑑賞ください。

 本展が、皆様にとって職人文化の魅力を再発見する機会となり、手仕事が持つ価値や美しさを改めて感じていただける場となれば幸いです。

富士川・切り絵の森美術館 館長 篠原 洋

作品のご紹介


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